薬物療法と言語聴覚フィードバックの問題点

現在、薬物療法・言語療法・心理療法が吃音の主な治療法と言われています。これらは、吃音症状を直接治すわけではなく、吃音を軽減させる環境を作ることで症状を改善していこうとする考えの治療法です。

しかしながら薬物療法には薬を服薬するために当然、副作用の問題があります。また言語聴覚フィードバックも機器を購入しなければならないことや常時装着していないといけないなどの問題もあります。

どのような治療方法にも長所や短所があります。後述する薬物療法と言語聴覚フィードバックの問題点を踏まえた上で、自分に合う治療法を検討していければと思います。

①薬物療法の種類

SSRI(パキシル、ルボックス、デプロメールなど)

SSRI(選択性セロトニン再取り込み阻害剤)は、2000年頃から使用されるようになった抗うつ薬です。うつ病や不安障害は、三大神経伝達物質の一つであるセロトニンが不足していることが原因の一つと考えられています。

セロトニンはノルアドレナリンやドーパミンの過剰分泌を抑え、心のバランスを整える作用があります。SSRIは、セロトニンを増やす働きや分解・吸収されないようにする作用があります。従来の抗うつ薬(三環系)に比べて副作用が少ないのが特徴です。

抗不安薬・精神安定剤(デパス、メイラックスなど)

抗不安薬・精神安定剤ともに不安や緊張を和らげる作用を持つ薬です。精神安定剤は以前、抗精神病薬と抗不安薬の総称とされていましたが、現在では「精神安定剤=抗不安薬」として使われています。薬の種類が多く、不安の強さや作用時間によって症状に合う薬が処方されます。また眠気などの副作用がでることがあります。

βブロッカー(インデラル・テノーミンなど)

交感神経の働きを抑える作用のある薬です。強いストレスや緊張は、交感神経の働きを高め、血管の収縮や筋緊張を引き起こします。そして血圧・心拍数の上昇、動悸や不整脈の症状となって現れます。

本来は高血圧や狭心症の治療に用いられていましたが、緊張やあがり症にも効果があるして使用されています。SSRIなどの抗うつ薬との併用で用いられることも多いそうです。

②SSRIの副作用と問題点

従来の抗うつ薬(三環系うつ剤)と比べて副作用が少なく安全性か高いと言われていますが、全く副作用がないわけではありません。

SSRIは、消化器管に存在するセロトニンに働きかけるため、吐き気や嘔吐などが多く認められています。また、個人差はありますが眠気や不眠などの症状の他、口渇・便秘、めまい ふらつき、体重増加、性機能障害、などの副作用が出ると言われています。

パキシルなどの一部の薬は、急に中止すると離脱症状が現れます。さらには、服薬開始時や増量時にはアクチベーション症候群(賦活症候群)と言われる、不安やイライラ、怒りっぽくなる、身体がムズムズしてじっとしていられないなどの症状がみられる場合もあります。

気分を楽にさせたり、意欲を高めたりする効果があるため、吃音に対する日常的な不安や恐怖が軽減される可能性はあるかもしれません。しかし、眠気や吐き気、口渇などが副作用として現れてしまうことは、発声や発語の妨げの要因となりうる可能性もあります。また、極度の緊張状態による身体症状と同じ状態である場合や眠気により日常生活を送ることに支障が出るように思えます。

③抗不安薬・精神安定剤の副作用と問題点

抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)には、①抗不安作用、②催眠作用、③筋弛緩作用、④抗けいれん作用の4つの働きがあり、抗不安作用の強弱と作用時間によって薬の種類が異なります。作用が強く、長時間効果が持続する薬ほど副作用が強いと言えます。

抗不安薬は、脳内の中枢神経を抑制する働きがあるため、眠気やふらつきが出る可能性があります。特に注意しなければならないのが、依存性です。

薬の種類や服用期間などで異なりますが、服用し続けていると耐性(薬に慣れてしまう)ができてしまうことや身体依存(急に服用を中止すると思考能力の低下やイライラ、焦燥感が出現)が形成されると言われています。

吃音の人にとって不安や緊張、筋緊張の緩和は症状の軽減に効果的とも思えますが、薬がないと落ち着きがなくなる、不安が強まる、また震えやめまい、頭痛などの身体症状が現れてしまっては悪循環に陥っているように思えます。

④βブロッカーの副作用と問題点

βブロッカーは、血圧を下げ心拍数を抑える薬のため、心臓だけではなく身体全体に副作用が現れることがあります。心拍数をさげるためには、心臓に働きかけていきます。

心臓は血液循環を行い、血液中から酸素を取り込んでいます。心拍数が下がりすぎてしまう(心拍数1分間60~50以下)と血液循環が弱まり酸素が不足しさまざまな副作用が出現します。希に重篤な場合は、心不全や心房ブロックなどの副作用があります。

主な副作用は、徐脈、低血圧、疲労 倦怠感、めまい、不眠、手足のしびれ(末梢神経炎)目の乾燥などがあります。その他には、抑うつ状態になる、悪夢を見るなどの精神症状も見られる場合があります。

吃音の人にとって、強い緊張や不安・ストレスによる血管収縮や動悸などを抑えるため薬ですが、うつ状態などの精神症状を併せ持っている場合もあり、めまいや倦怠感、不眠、悪夢などの副作用は、意欲の低下などを強めてしまう可能性もあり日常生活に支障をきたす場合もあると考えられます。

⑤言語聴覚器の種類

DAF(遅延聴覚フィードバック)は、1人より他者と声を合わせて発話すると症状が出にくいといわれている「二人読み効果」の原理を用いた機器(マイクとイヤホン)を使用することで吃音症状を軽減させるという治療法です。

マイクを通して発した自分声が少し遅れて(0.2秒後)、周囲の声として自分の耳に届く仕組みになっており、擬似的にほかの人と一緒に話す状況を作り出すことで吃音症状を緩和していくことを目的としています。

FAF(周波数変換フィードバック)は、DAF同様の治療法ですが、フィードバックされた自分の声が、少しピッチが上がった状態で戻ってきます。

DSA(吃音抑制装置)日本の吃音協会が独自に企画開発した装置で、DAF機能とFAF機能を併せ持っています。使用の際には吃音の知識または、装置の設定に詳しい人の指導下での装着が必要です。

⑥言語聴覚フィードバック法の問題点

・難発性吃音の人には効果が認められない(声が出ないのでフードバックができない)。
・発表や朗読には効果があるようですが、会話などには効果がないと言われています。
・自分の声を聴きながら話しをすることで症状を軽減させるために、話すテンポが遅くなり、抑揚のない不自然な話し方になってしまいます。
・機器が10万円位の高額であるため、気軽に購入することが困難であり、FAFに関しては、日本では発売されていないために海外から購入しなければなりません。
・機器を装着していないと効果がないため、常時マイクやイヤホンを装着しないといけないこと、また、イヤホンやマイクを装着可能な生活場面が限られているなどの問題点があります。

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