大人がなりやすい難発吃音の特徴と原因について

吃音には、2~5歳頃の幼児期に発症する発達性吃音と青年期以降に発症する獲得性吃音(症候性吃音)の2種類があります。

吃音の9割は、幼児期に発症(発達性吃音)して7~8割が思春期頃までに自然に治ります。一方、大人の吃音については、幼児期からの吃音が治らなかった場合と後天的な原因による獲得性吃音になります。

後天的な原因には、①神経学的疾患や脳機能の損傷、②心的なストレスや外傷体験により吃音が発症すると考えられています。

症状は、言葉が出ない難発吃音が多く見られます。幼児期の発達性吃音に比べて、言葉を発する機会が多いことや社会生活の中で回避できない状況が多いこともあり、大人の吃音者にとっては大変辛い症状です。

①難発吃音の特徴

〇特定のシュチュエーション

難発吃音の特徴として、特定の場面(場所・人など)で言葉を出すことができなくなります(特定の場面以外ではどもることなく話すことができます)。

特定の場面には電話や朝礼、結婚式のスピーチなど、人前で話をする場面で見られます。特に電話に関しては相手が見えない分、余計に不安や恐怖を抱えている人は多いです。ベルが鳴るだけで冷や汗や動悸が出る人もいます。

また、朝礼や人前でのスピーチでも前日から眠れなくなったり、何日も前から不安や緊張が継続したりします。

〇特定の言葉

難発吃音には特定の場面以外に特定の言葉だけ出すことができないこともあります。「あ」「お」「た行」「か行」など、人によって異なります。

特定の言葉を意識しすぎると出すことのできない言葉が増えていきます。言葉が出ない場合は、「お疲れ様」を「ご苦労様」などに言い換えることで状況を回避しています。同じ言葉でも最初の言葉のみ出すことができないことも特徴です。

〇自分の名前や会社の名前が言えない

自分の名前や会社の名前が言えない場合は、言い換えなどの方法を使うことができないために大人の吃音者が最も苦悩する状況です。

要因としては、脳の神経細胞(ニューロン)と伝達物質(シナプス)が関係していると考えられています。これは記憶の問題でもあります。通常、1度「自分の名前が出てこない」という記憶が作られても、また新しい「自分の名前を言う」という記憶が作られます。

しかし、同じ場面で同じ状況を繰り返すことで「名前がでない」ことが強化されてしまい、いつも自分の名前が出て来なくなってしまいます。

②きっかけ

〇会社のストレスや仕事の失敗、パワハラなどさまざま

会社に勤めるようになると、他人と関わらない、話をしなくても良いという環境の職種を選ばない限り、言葉や話をする毎日を送ることとなります。

挨拶・電話などは社会常識となっていて、吃音の人にとっては失敗することも多く不安や緊張から吃音を余計に悪化させてしまいます。

一般的に吃音に対する認識が低く、難発吃音の人に出会っても吃音と理解してもらえることはほとんどないのが現状です。不真面目と思われたり、社会人として劣っているなどレッテルを貼られる場合もあります。

〇子どものころからの吃音が固定化したも


幼児期の吃音の9割は自然に治りますが、幼児期に非常に強い不安や恐怖、トラウマになるような体験をしてしまった場合などは、大人になるまで症状が継続されます。

また、これらの経験は、連発吃音・伸発吃音の症状が重症化し難発吃音へ移行させてしまう場合が多いので、大人の吃音には難発吃音が多いと言えます。

③原因

〇脳機能の障害

生まれつき脳機能や構造が異なっています。話をしている時に右脳が過剰に活動することや聴覚野(音を聞いた時に活動する領域)の活動が低いことがわかっています。

また、言葉が出なくなってしまう状態は、神経伝達物質のバランスが崩れる(ドーパミンの過剰分泌・セロトニンの不足)ことや記憶に関わる神経細胞や伝達物質なども影響しています。

特に、難発吃音の場合は、ストレスや緊張から脳の記憶を司る海馬の機能が低下することで「バルサバル反射」が起こります。この反射は、言葉を流暢に出すことや喉が詰まる(アドレナリンの過剰分泌のため)、身体に不要な力が入るなどの状態を引き起こします。

〇「吃音」という言葉を知ってしまったことによるもの

吃音であることを自覚している人は少なく、第三者からの指摘により吃音であることを知る人は意外と多いです。

今まで気にせず普通に話ができていたのに、「話をしたくない」「恥ずかしい」などの感情が現れ、周囲を必要以上に気にしてしまいます。そのため、吃音が悪化したり慢性化したりします。吃音の人は、予期不安があり、不安や緊張が強くいつも吃音のことを考え悩んでいます。

④難発吃音の問題点

難発吃音は、吃音の症状の中で最も辛い症状です。自分では話したいのに言葉が出ない、理解しているのにわからないと思われる、コミュニケーションをとりたいのに取ることができないなど、本来の自分との葛藤や劣等感・不甲斐なさを感じやすいといえます。

ネガティブな感情を抱いてしまうことからうつ病や社交不安障害を併発してしまう確率も高いです。

また、仕事へのプレッシャー、かなりの緊張や不安を伴う状況下での仕事(電話・朝礼・大勢の前での発言など)など、多くのストレスがあり回避することが難く、吃音が余計に悪化してしまうという問題もあります。

幼児期の吃音と違い、言葉が出ないという症状なので吃音と気づいてもらえないことや吃音を隠すテクニック(言い換えや回避できる状況を回避するなど)を覚えるために相談することもできずに悩んでいる人も多くいます。

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