吃音と似ている「場面緘黙症」、「失語症」、併発しやすいSAD(社交不安障害)、鬱とは

吃音の人は、特定の場面で言葉が出ないことや話ができない、流暢に話すことができないなどの症状があります。このような症状がみられる疾患に「場面緘黙症」と「失語症」があります。いずれも言語やコミュニケーションに関わる能力に問題を抱えています。

また、吃音がある人は、不安や緊張が強いことやネガティブな感情を抱きやすい傾向を持っています。さらに気質や性格などの傾向から、吃音症状への葛藤や理想と現実のギャップから社交不安障害やうつ病を併発してしまう可能性が高くなります。

①場面緘黙症とは

家では、家族と何の問題もなく話をすることができるのに、家以外の特定の場所(幼稚園や学校など)では、ほとんど話しをしない、または、全く会話をしない現象です。

特定の場所や状況で起こるため選択性緘黙とも言われています。明確な原因はわかっていませんが、本人や家族の気質や環境への適応能力の問題などいくつかの要因が絡み合っています。先天的に不安になりやすい傾向があったり、内向的な性格の子どもが多いと言われています。

特定の場面では、話をすることはできませんが、表情や動作などではコミュニケーションを取ることが可能です。

また、不安が強い場合には、体が思うように動かないことや不安や恐怖を感じる場面を回避しようとして反抗的な態度を取ることもあります。

2~5歳頃に発症することが多く、早期の教育的介入により1~2年で克服できる場合もあります。成人になっても症状が続いている人もいます。

②失語症とは

大脳には(多くの人は左脳)言葉を司る言語領域があます。失語症は、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害や頭部の外傷が原因でこの言語領域が損傷し、言語能力が障害される高次機能障害の一つです。

話すことができなくなるだけではなく、全ての言語表現能力、「話す」「聞く」「読む」「書く」ことが困難な状態になりまする(困難になる領域は脳の損傷部分により違う)。

失語症の種類には、話の内容は理解できるが流暢に話せない「ブローカ失語」、流暢に話せるが話の内容が理解できない「ウェルニケ失語」、物の名前が出てこない「健忘失語」、話す・聞く・書く・読む全ての機能に障害が出る「全失語」の4種類あります。

症状には、言葉が出てこない「喚語困難」、話の内容が理解できない「理解力障害」、言葉を言い間違える「錯誤」(単語の間違い「語性錯誤」発音の間違い「字性錯誤」)、限られたいくつかの言葉が繰り返される「残語」、同じ言葉が繰り返される「保続」があり、失語症の種類によってみられる症状が違います。

③それぞれの違い

〇場面緘黙症 

<発症年齢>一般的に2~5歳の時期に発症します。

<症状>家以外の特定の場面で、全くまたは、ほとんど話ができなくなってしまいます。特に言葉がしゃべれないわけでもコミュニケーションが取れないわけでもありません。

<原因>明確な原因はわかっていませんが、脳機能そのものに問題はなく、行動面や学習面となどにも問題が見られません。先天性の不安傾向や内向的な性格が関係している可能性があります。

<予後>早期の教育的介入により1~2年で克服できる場合もあります。成人になっても症状が続いている人もいます。

〇失語症

<発症年齢>脳血管障害が起こる中年期以降に多く見られますが、どの年代にも発症する可能性があります。

<症状>全ての言語表現能力、「話す」「聞く」「読む」「書く」ことが困難な状態になります。失語症の種類によっては会話や言葉を理解することができなくなる場合もあります。

<原因>脳梗塞や脳出血などの脳血管障害や頭部外傷などによる脳(言語野)の機能障害です。

<予後>脳機能の障害の程度や損傷部位によって異なりますが、言語療法やリハビリを行うことで症状が軽減する場合もあります。右側の身体麻痺や視野障害などの後遺症が見られこともあります。

〇吃音

<発症年齢>発達性吃音は、一般的に2~5歳の幼児期に発症することが多く、獲得性吃音は青年期以降に発症します。

<症状>単音や単語の一部を連発して繰り返してしまう連発吃音、最初の言葉の一部を長く引き伸ばしてしまう伸発吃音、挨拶などの短い単語でも、言葉が出ない難発吃音があります。また随伴運動も見られる場合があります。

<原因>明確な原因はわかっていません。発達性吃音は、子どもがもともと持っている資質的要因、子どもの成長に合わせた発達要因、そして、子どもを取り巻く環境要因が互いに影響して発症すると考えられています。

一方、獲得性吃音は、脳機能や中枢神経などを損傷することによって発症したり、強烈な心的ストレスや外傷性ストレス(トラウマ)によっても発症したりすると言われています。

<予後>発達性吃音の7~8割は自然に治りますが、成人まで症状が続く場合や獲得性吃音の場合は、なかなか治りにくいと言われています。

④SAD(社交不安障害)とは

社交不安障害は以前、対人恐怖症と言われていました。字の通り、人前や人に会うことに不安や恐怖を感じてしまう症状です。「人見知り」や「恥ずかしがり屋」とは比較できないほどの強い不安と恐怖が継続し、人前で話や食事ができない、字を書こうとすると震えが止まらないなど日常生活に支障をきたします。

また、身体症状として赤面・震え・多汗などの自覚症状もあります。強い不安やストレスが、ノルアドレナリンを過剰分泌させ、自律神経のバランスを崩すことで起こります。

社交不安障害の人は他の疾患を併発することも多く、特にうつ病との併発率が高くなっており、併発している人の自殺率が高いことが問題となっています。また、吃音の人は、吃音のない人と比べて4倍、社交不安障害なる確率が高くなります。治療法は、薬物療法と心理療法が中心となります。

⑤鬱とは

気分が落ち込むなどの抑うつ気分と意欲の低下などの精神症状が継続して起こります。人によっては頭痛やめまいなどの身体症状も現れます。

うつ病の原因はひとつではなく、生活の中で起こるさまざまな要因が絡み合って精神的・身体的ストレスを引き起こします。そして脳内の神経伝達物質の中でも感情との関わりが深い「セロトニン」と「ノルアドレナリン」の分泌が不足することでバランスを崩し発症します。

きっかけとなりやすい要因は、「環境要因」です。対人関係や喪失体験(死別・離婚・財産・健康など)や役割の変化(昇進・結婚・出産など)など、本人にとって悪い出来事だけではなく、良い出来事でも環境の変化がきっかけとなります。

また、うつ病になりやすい「性格傾向」もあり、責任感が強い・完璧主義・几帳面・常に他人に配慮するなどの傾向を持つ人がなりやすいと言われています。

治療法は、主に3つの方法が有効とされています。休養、薬物療法(SSRI・NaSSAなどの抗うつ薬)、心理療法(認知行動療法やカウンセリングなど)を併用して治療を行っていきます。

⑥SAD、鬱、吃音の治す順番について

吃音の人はうつ病や社交不安障害を併せ持つ確率が高いですが、必ずうつ病や社交不安障害を併発するわけではありません。

吃音の人が抱える不安や緊張、それに伴うネガティブな感情が結果的にうつ病を引き起こします。また、吃音による失敗体験が予期不安を強め、結果、社交不安障害を引き起こします。

吃音そのものが原因ではなく、吃音があるために生じる考え方の歪みや強い不安や緊張・ストレスが原因です。吃音を先に治せば、併発した疾患も治るような気がしますが、治療の順序としてはうつ病や社交不安障害を優先させます。

薬物療法や心理療法(認知行動療法・森田療法など)などの治療を行うことで、精神的・身体的なストレスを軽減し、考え方の癖を直し、ネガティブな感情をなくすことでうつ病や社交不安障害を治すことができ、吃音症状も軽減していきます。

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