吃音が治らないと言われていたのはなぜ?

普段の生活の中で、特徴がある行動や症状を持つ人に出会った時に、「この人は病気(障害)を抱えている」と思う人は少ないと思います。

以前は、うつ病や発達障害なども「気が弱い・努力が足りない」「変わり者・困った子」「親が悪い(しつけ)」などと言われ誤解されていました(現在では、原因が解明されつつあるので誤解は少なくなってきています)。

吃音も原因が解明されていないために、偏った認識や治療法が行われてきた時代があります。また、吃音症状はなかなか病気や障害と結びつきにくく、医療的治療の対象になっていなかったことも吃音が正しく認識されていない一つです。

吃音の症状や悩みを改善する方法はいくつかありますが、決定的な治療方法がないことが「吃音は治らない」と言われ続けている理由です。

①日本では間違った治療方法が定説となった

吃音に対する間違った治療法が定説となった原因には二つあります。一つ目は、吃音が精神的な緊張などの「心因性」によるものと認識され、心理療法が重視されていたことです。

心理療法は、吃音によって生じる不安や緊張、うつ状態などに効果があるとされています。吃音そのものを治療するわけではないので、全ての人にとって効果的な治療法とは言えませんでした。

近年、吃音は単一の理論や治療法で処置できるものではなく、複数の治療法を組み合わせる包括的なアプローチが必要との考えになりつつあります。偏った吃音の認識と治療法が「吃音は治らない」と広まった原因の一つと考えられます。

二つ目は、一部の吃音者が長期間の発声訓練や講談により吃音を治すことに成功し、「吃音の治療には発声訓練と講談で治る」と民間矯正所を開き、自分の矯正法の優位性を主張したことです。

努力をすれば吃音は治るといった精神論的治療方法が推奨され、間違った治療方法が定説となりました。日本で最初に大人の吃音の言語訓練を考案し、その後、本格的な言語療法に取り組んだ花忠一郎氏が開いた花沢研究所が有名です。

矯正法には、腹式呼吸や発声訓練の他に姿勢や身体トレーニングによる不安や緊張を取り除く訓練が行われます。全ての吃音者に有効ではありませんが、一部の人や症状は改善されたと言われている矯正法のようです。

②それにより日本は長らく吃音研究がなされていなかった

吃音は米国をはじめ諸外国で研究が進められています。一方、前述したように日本は間違った治療法が定説となったために、吃音に対して医療の介入はなく、研究対象ではありませんでした。

そのため長い間、研究が行われず、現在でも吃音に対して偏った認識を持っている人や吃音は治らないと思っている人も大勢います。しかし、間違った認識や治療法では効果が現れないことから医療分野として研究が行われるようになりました。

その後、日本では、2005年に発達障害支援法に吃音が含まれると表明され、2014年7月3日現在、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが、ホームページ上に吃音の定義を掲載したことで急速に吃音は発達障害としての認識が広まりました。

現在、数は少ないですが研究機関もあり、原因や治療法が解明された部分もありますが、未だ解明できていないことが多いです。

③さらに吃音治療の専門家「言語聴覚士」も不足している

吃音治療は、基本的に言語聴覚士による訓練等になります。しかし、現在、吃音を専門とする言語聴覚士の数は不足した状態になっています。原因は、吃音が医療の対象外とされていたために言語聴覚士の育成過程で吃音について学ぶ機会がほとんどなかったためです。

さらには、前述したように吃音研究がされていなかったために医学的治療が確立されていないことも関係しています。

また、吃音治療を対象とした医療機関が少ないことで専門の言語聴覚士が不足している状態が続いていることも挙げられます。

吃音者は自分が吃音であることを隠す傾向があること、吃音は治らないと思っている(諦めている)、どこの病院にかかれば良いのか明確でないことが、吃音者の受診率が低いことにつながり、対象とした医療機関がなかなか増えません。さらには、吃音専門の言語聴覚士を志しても就労先が少ないことも原因と考えられます。

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